- 1.これまでの流れ
- 経済財政運営と改革の基本方針2019(令和元年6月21日閣議決定)では、学校法人のガバナンスについて以下のような指摘がされました。
“新公益法人制度の発足から10年が経過したことから、公益法人の活動の状況等を踏まえ、公益法人のガバナンスの更なる強化等について必要な検討を行う。公益法人としての学校法人制度についても、社会福祉法人制度改革や公益社団・財団法人制度の改革を十分踏まえ、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改正のため、速やかに検討を行う。”
これを受けて学校法人のガバナンスに関する有識者会議(令和2年1月~令和3年3月)が設置されました。特に大学を設置する法人を対象とし、学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取組みの基本的な方向性について取りまとめを行いました。
さらに「手厚い税制優遇を受ける公益法人としての学校法人に相応しいガバナンスの抜本改革につき、年内に結論を得、法制化を行う。」旨の経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)が出たことから、学校法人ガバナンス改革会議(令和3年7月~12月)新法人制度の改革案や規模等に応じた取扱いについて検討を行い、令和3年12月に、制度改正に向けた改革案の全体像を取りまとめました。
しかし、私学関係者からの反対意見も強く、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会において再度議論が行われ、下記のような報告が取りまとめられました。
- 学校法人制度改革特別委員会報告の概要(「学校法人制度改革の具体的方策について」
- 令和4年3月29日大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会)
3-2 学校法人における監査体制の充実
(2) 重層的な監査体制の構築
・大臣所轄学校法人において、リスクマネジメントや内部監査、監事への内部通報等の内部統制システムの整備を理事会に義務づけるとともに、会計監査人による会計監査を制度化。その際、私立学校法及び私立学校振興助成法に基づく計算書類や会計基準を一元化し、両法に基づく監査の重複を排除。
・事業報告書において学校法人のガバナンスに関する情報を積極的に開示する仕組みとするとともに、計算書類においてはセグメント(学校、附属施設等の部門)別の情報表示を検討。
・子法人の設置により、学校法人のガバナンス構造に間隙が生じないよう、計算書類の注記における記載事項等の見直しを検討するとともに、監事・会計監査人が子法人を調査対象とすることができるようにすべき。
- 2.私立学校法改正法案骨子
令和4年5月20日文部科学省から「私立学校法改正案骨子」が公表され、2022年秋の臨時国会に提出予定です。なお、経済財政運営と改革の基本方針2022(令和4年6月7日閣議決定)では、「学校法人について、沿革や多様性に配慮しつつ、社会の要請に応え得る、実効性あるガバナンス改革の法案を、秋以降速やかに国会に提出する。」とされています。
基本的な考え方
・学校法人の機関設計について、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、各機関の権限分配について、法人の意思決定と業務執行の権限や業務執行に対する監督・監視の権限を明確に整理し、私立学校の特性に応じた形で「建設的な協働と相互けん制」を確立する観点から、必要な法的規律を共通に明確化して定める。
・大臣所轄学校法人と知事所轄学校法人の区分その他の規模に応じた区分を設け、寄附行為による自治を一定の範囲で許容し、学校法人の実情に対応する。知事所轄学校法人であっても、広域通信制高等学校を運営する法人その他全国的に展開するなどの大規模な法人について、大臣所轄学校法人と同等の扱いとする。
学校法人における意思決定
・大臣所轄学校法人における学校法人の基礎的変更に係る事項(任意解散・合併)及び重要な寄附行為の変更について、理事会の決定とともに評議員会の決議(承認)を要することとする。
理事・理事会
評議員会以外の機関が理事の選任を行う場合、評議員会からの意見聴取を義務付ける。
理事の客観的な解任事由(法令違反、職務上の義務違反等)を定め、評議員会に、理事選任機関が機能しない場合の解任請求、監事が機能しない場合に理事の行為の差止請求・責任追及の請求を認める。
大臣所轄学校法人における外部理事数を引き上げる。
評議員・評議員会
理事と評議員の兼職を禁止し、評議員の下限定数は、理事の定数を超える数まで引き下げる。
評議員の選任は評議員会が行うことを基本としつつ、理事・理事会により選任される者の評議員の定数に占める数や割合に一定の上限を設ける。
監事
監事の選解任は評議員会の決議によって行い、役員近親者の監事就任を禁止する。
特に規模の大きい大臣所轄学校法人については、監事の一部を常勤化することとする。
会計監査
大臣所轄学校法人においては、会計監査人が会計監査を行うこととし、その選解任の手続や欠格要件等を定める。
私学助成の交付を受けていない法人も含め計算書類や会計基準を一元化し、計算書類の作成期限を会計年度終了から3か月以内に延長することとする。
上記の会計監査を受ける場合に私立学校振興助成法に基づく公認会計士又は監査法人による監査を重ねて受ける必要が生じないよう措置する。
その他
監事・会計監査人が子法人を調査対象とすることができるようにする。
(2022年9月末現在)